好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

迷い…礼

萌夏ちゃんが行方不明になったのに、遥は仕事に戻ってきた。

「本当に大丈夫ですか?」
いつものように朝のコーヒーを入れ、また同じ言葉をかけてしまう。

「しつこい」
「すみません。でも、」
心配だから、黙ってはいられない。

「今どこにいるのかはわからないんですよね?」
「ああ」

萌夏ちゃんの無事が確認できたと聞いたのは昨日。
場所は言えないけれど、都内の親せき宅にいるんだと連絡があったらしい。

「いいんですか?」
そんな電話一本で、放っておいて大丈夫なんだろうか。

「何度同じことを言わせる気だ?」
「・・・」

すこぶる機嫌の悪い遥。
きっと誰よりも萌夏ちゃんのことを心配しているんだろう。
でも・・・

トントン。
「おはようございます」
ノックをして入ってきたのは雪丸だった。

「おはようございます。お疲れ様です」
「ああ、おはよう。礼、もう体はいいのか?」
「ええ、昨日はお休みしてすみませんでした」
「気にするな」

遥の席に向かう間に挨拶を交わし、意味ありげな視線を送る雪丸。
言いたいことは想像できる。
きっと、空とのことを言いたいんだろう。

「で、なんだ?」
苛立ち気味の遥の声で、雪丸が遥に向き直った。
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