好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
愛することと愛されること

記憶…空

萌夏ちゃんがいなくなってから十日。
遥は毎日のように電話で話をしているらしいが、相変わらず会えない日が続いている。
きっと心配で仕方ないんだろうに、それでもいつも通り仕事に出てくる遥を俺はすごいと思う。

「それで?」
リビングのソファーに座り、機嫌が悪そうに俺を見るおじさん。

そろそろ何か言われるだろうとは思っていた。
必要もないのに平石建設に出向き、用事もないのに礼のそばをうろついているんだから。

「お前は何をしたいんだ?」
「何をって・・・」

おじさんはいつもそうだ。
俺がどんなことをしでかしても、「で、お前はどうしたい?」と俺の意志を確認する。
決して頭ごなしに叱ったりしない。
それはどんな事件を起こした時も一緒で、学校に呼び出されても、警察に補導されたときだって俺の気持ちを聞いてくれる。

「遥が呼んでいるわけじゃないよな?」
「もちろん」

この非常時に自分の気持ちを必死に抑えて、完璧なまでに業務をこなしている遥が、俺にヘルプを求めるはずがない。
あいつはそんなに弱くはない。

「じゃあ、お前の意志で毎日うちに顔を出しているんだよな?」
「そう、なりますね」

「それで?」

仕事が終わったら家に来いと言われた時点で、言い訳なんてできないとわかっている。
それでも、こんな風に面と向かって聞かれると・・・ 

「ったく、誰が言いつけたんですか?」
つい、いつものわがままが出てしまった。
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