好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

大地が消えた…礼

「もしもし」
少し緊張気味な空の声が携帯の向こうから聞こえた。

「ごめん・・・あの・・・」

自分でも、なぜ空に電話を入れたんだろうと思う。
頼ってはいけないと思っているのに・・・

「礼?」
優しい声で名前を呼ばれ、
「ごめんなさい」
溢れてくる涙を必死にこらえる。

私は何をしているんだろう。
今まで、ずっと一人で生きてきたのに。
どんなことがあっても、誰にも頼ることなく、一人で頑張ってきたのに。
私はこんなに弱い人間ではないのに。

「どうした?何があった?」
電話の向こうから聞こえる声に焦りはあるものの、普段より優しく問いかけてくれる。

「ごめんね、電話なんかして」
それでも、迷惑をかけてしまっているだろうという思いは消えない。

最近、毎日のように空がうちの会社にやってくる。
朝だったり夕方だったり時間はまちまちだけれど、専務秘書室の私のデスク前に置かれたソファーでパソコンを広げ仕事をする。
それに対して、きっと言いたいことはあるはずの雪丸も遥も見て見ぬふり。
だから私も何も言わない。
ただ、こんな行動に出るのは私を追いかけてのことと理解している。
うぬぼれに聞こえると嫌だけれど、今空は私を好きでいてくれていると。
だから、私は空に甘えてしまったんだ。

「何があったの?まずそれを聞かせて」
少しだけ大きくなった声。

「うん、実は、」
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