信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています

 夕食は賑やかだった。
7人で囲むテーブルには真由美の心づくしの料理が並び、
まるでお誕生日会だと美咲は大喜びだ。
樹の体調を思って酒は出さなかったが、地元で飲まれる乳酸飲料や
ハスカップを使った飲み物など、彼も興味津々で試していた。
その度に美咲が解説するものだから、食卓は笑いに包まれた。

 食後は、居間に移ってコーヒーの代わりにハーブティーを飲むことにした。
男性陣は早速ビジネスの話になったらしい。
牧場の隣にある高畑家の別荘が使用されていないのが勿体ないという話から、
観光客向けのペンションか何かで使用出来ないかと話が発展した。
森下牧場にとっても滞在客が見込めるのはありがたい。
ウインウインの話が纏まりそうな様子だったが、
無情にも真由美が口を挟んだ。

「樹様もお疲れでしょう。今夜はお開きですよ。
 仕事の話はまた来週。」

真由美には誰も逆らえない。
台所の片付けも終わっていたし、久保田家の皆も揃って帰宅していった。

「お疲れ様、賑やかだったわね。」
「ああ、こんなの子供の頃以来だな。」

「明日明後日は、真由美さんお休みだから
 ご馳走は期待しないでね。」
「え、君が作るの?」

「あら、悪かったわね。私の手料理で。」
彩夏は毒づいたが、樹は嬉しそうだった。

「妻の手料理か…。いいもんだな。」

彩夏の頬がかあっと熱くなってきた。

『やけに、優しい』

病気をしたせいかとも思うが、樹の雰囲気は前と違う。
美咲に話しかける時も穏やかだったし、食事中もニコニコしていた。

マスコミの記事や江本からの情報とは全く違う。
どっちが本当の樹なのか、彩夏には判断しようがなかった。


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