白鳥学園、いきものがかり
***


眠る紬を診察した先生が言うには、吐血した原因は、極度の緊張とストレスの可能性が高いとの事だった。

要は他に異常が無さそうとのことだ。
精密検査は後日、紬の体調がいい日にするべきだと言う指示を受ける。

紘は頭を下げ、椅子に腰かけた。


「緊張とストレス…」


紬の顔に手を当て息をしているか確認する。
浅い呼吸だが、しっかりと息をしているのが分かる。


「あんなんで緊張してどうするんだ?紬」


頬を擦り、唇をなぞる指先。


「その先もあんだぞ紬。そんなんじゃ、俺の事受け入れられねぇだろ?」


立ち上がった紘は紬へ顔を近付けた。
その瞬間、


動きが止まった。


病室で光るテレビに視線が向けられる。今日から流れ始めたカメラ広告だった。


「………はっ……?」


モデルの累がテレビデビューをした日。

無愛想で無表情、無口なルイは、番組内でも喋ることはほとんどなかった。司会者が話しかけても雑な応答のみ。若手のモデルがテレビで活躍できる機会を自ら潰す、そんな様子に大御所は困惑し嫌っていたかもしれない。

しかしそれはルイの魅力を際立てる一つに過ぎなかった。


笑わないルイ。欠伸ばかりするルイ。


寧ろそれがルイらしいと話題になったのだ。


そんな累が……、


微笑んでいる。喋っている。


『紬じゃなきゃ、無理だ』


愛おしい彼女を見るその姿。
誰もが夢見てたルイの愛の表現。

────────相手は、


「…紬…だと?」


後ろ姿だろうと、手足の一部だろうと、紘が紬を間違えるはずがない。愛おしい紬を。



「…アイツ…!」




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