白鳥学園、いきものがかり
「……関係ない」
え?
その瞬間、いおちゃんは頬を殴られていた。
私を振り解いた一瞬に累は左頬を殴っていたのだ。
「ッ…、痛、」
「いおちゃん!」
頬は赤く腫れ、唇からは血が出ている。
「いおちゃん?…なにそれ、聞いた事無い」
累の言葉を無視し、慌てて棚から湿布を引っ張り出した。
「いおちゃん、冷たいと思うけど…」
「ああ、うん。大丈夫。ありがとう、ひーちゃん」
ポケットからハンカチを出そうとする手を引っ張られた。
累だった。
「紬、言って。こいつの事なんでそう呼ぶの」
「っ…累、言う事があるでしょ?」
首を傾げた累は「うん」と言った。
「紬、好き」
ッ……!!
「ふざけないで!」
「ふざけてない。俺は本当に紬が好き」
「っっ…!違うでしょ!いおちゃんに謝るべきでしょ!」
「…………なんで?」
腫れた頬も血も。
全部累がやった事なのに。
どうして全て他人事みたいな言い方をしているの?
「……ひーちゃん、」
いおちゃんは大丈夫だと言うと、制服の袖で血を拭った。
そして私の手を握り顔をジッと見つめられる。
「もしかして、あのCMってひーちゃんの事?」
大きく鼓動が動いた。
「うん。そう」
違う、そういうつもりだったのに…累が先に答えていた。
っ…累…?
なんでそんな事…、
累はおもむろにマスクを外し、髪を掻き上げた。
ルイが私の手を引き、抱き寄せる。
「俺の彼女」
そう言って、
私の顎を持ち上げると、そのまま唇を重ねた。