白鳥学園、いきものがかり
このマンションへ来るのは私が小学生以来だ。
タクシーから降りた私はそれを見上げていた。
深呼吸をして凪の家のインターホンを押した。
『………はい』
出たのは凪のお父さんだった。
「あっ、えっと…お久しぶりです。雲雀紬です」
『……紬ちゃん?ちょっと待っててくれる?』
良かった。覚えていてくれたみたい。
てっきり玄関を開けてくれると思ったけれど、なんと凪のお父さんが直接降りて来てくれた。やつれ顔のおじさんに吃驚した。
「久しぶりだね…ごめんよ。今家の中に入れられなくてね」
「い、いえ!…すみません。私も急に来てしまって…」
ヨレヨレのスーツ。細い体。目の下の隈。……最後に見た時よりも明らかに体調が悪く見える。
おじさんに連れられて近くのカフェへと入り、凪の状況を説明された。
「凪は…今情緒不安定でね。人に会わせられないんだ。折角来てくれたのに申し訳ないね」
「っ、どうしてそうなってしまったんでしょうか…?」
言いにくそうに視線を逸らしたが、言葉を続けた。