白鳥学園、いきものがかり
………紘が、私の物…?
私は左右に首を振った。
「違う…よ。紘は紘のだよ。誰かの物なんてそんな事…、」
突然視界が揺れた。紘が私の肩を思いっきり掴み自分の胸に抱き寄せたから。苦しいぐらい抱きしめられて呼吸がしづらい。
「俺は何も間違ってない。紬を一番アイシテルのは俺で、紬が一番アイシテルのも俺だ」
「っ……、私はみんな…、」
「俺だけで十分なはずだ。金は腐るほどあって顔も良くて誰よりも紬を考えてる。そうだろ?」
っ…、苦しい…!
「いい加減にしろよ」
…………凪…。
苦しさから抜けて咳き込む。呼吸を一人で落ち着かせる。視界に映るのは紘と凪がいがみ合う姿。次に手を振り上げたのは凪で。紘の頬が赤く腫れあがる。
「………っっ、もうやめて…」
ヒュー…、
喉の奥が苦しい。
届かない声。言い争う二人。
………っ、私がいるから?私のせいでこうなってるの?
壁を伝い、玄関へと向かう。その間も背後からの怒号は消えない。
静かに玄関を開け外へ出る。呼吸はずっと荒いまま。喉がヒューっと音を鳴らす。喘息になりつつあった。
「「────────紬!!!」」
外に出たことがバレてしまった。
二人の声に私は慌ててエレベーターへと向かう。
追いつかれる前に飛び乗り、一階のボタンを押す。窓の開いたエレベーターから見える二人の姿。私はそれを横目に閉めるボタンを押した。