白鳥学園、いきものがかり
…………帰らなきゃ。
帰って吸入器使わなきゃ…。
降りてすぐにへたり込んだが、階段からバタバタと駆け下りる音が聞こえた。
………追いつかれちゃう。早く帰らないと…またっ…。
震える足を無理矢理立たせマンションを出る。
携帯は凪の家に忘れてしまった。タクシーは呼べない。
痺れる手足でゆっくり家路へと歩き出した。
…………っ、なんて。
カクン、と膝が落ち地面に当たる。アスファルトに当たる膝の痛み、呼吸の苦しさ。
……………なんて脆い体なんだろう。
まともに歩く事も出来なくて、自分の体調管理も上手に出来ない。……みんながどうしてあんな事ばかりするのかも分からない。
「……っ、誰か助けて…」
ガサッ…、俯く私の視界に白いコンビニ袋が揺れた。
「────────紬ちゃん、」
聞き慣れた声。優しい彼の声。
………っっ、
「こんな所でどうしたの?」
「……か、けるっ…!」
首を傾げ、私に手を伸ばす翔がそこにはいた。
翔に引かれゆっくりと立ち上がる。膝には擦り傷が出来ていた。
「紬ちゃんも凪の様子見に来たの?紬ちゃんは優しいね」
膝の石を払い、涙を拭ってくれる翔。
変装のサングラスを少しずらし、笑みが見える。
「僕の所においで」
両手を広げる翔に吸い込まれるように胸の中へと入る。
「紬ちゃん、ちゃんと呼吸しよう?大丈夫だよ。僕がいるから」
「ふぅ…はっ…、」
「そうそう。上手。僕の呼吸に合わせて…うん。その調子」
………暖かい。
「────────おい、」
びくっ、
「なんでここにいんだ、てめぇ」
「俺の紬を…返せよ」
息を切らした紘と凪が殺気を放ち立っていた。