白鳥学園、いきものがかり



『ちょ…ちょっと待ってよ!』


「待つ必要はない。紬と離れる事になるのなら俺は辞める。そういう契約だったはずだ」


『でも、ほら!その子また病院生活になるかもしれないんでしょ?それならしょっちゅう会いに行けるわけじゃなくなるわけだし…』


「ふざけてんのか?」



傑の低い声に電話口の女がたじろぐ。



「紬の体調は良好だ。
薬頼りも少なくなってきている。

それを勝手に悪くするな。
部外者は引っ込んでいろ」



電話越しでも分かるような殺気、怒り。


『っ…ご、ごめんなさい。そうね、その子の為にも言っては駄目な事よね。悪かったわ。次から気を付け、』

「で?要件は?」


聞く耳すら持たない傑は、言葉半分でそう言った。



『え、ええそうね。

あなたに言われた通り、雑誌は来週に出来たわ。でもドラマの撮影は時間を遅らせる事しかできなくて…』

「チッ、」


紬の頭を撫でる傑が大きな舌打ち。


「分かった。今から行く」

『迎えに行くわ。駅前でいいかしら?』

「ああ」


それだけ言って電話を切った。

分厚い眼鏡を掛け、皺だらけのネクタイを結ぶ。
無造作ヘアを更に解し寝ぐせのような髪型に。



「紬、行って来る」



寝ている紬の唇にキスをした。
起きない姿に少しだけ残念そうな傑。



「…もうテレビに出なくても近くにいれるのにな。

紬が俺もスグルも好きだって言うから出てんだ。
本当は今すぐ辞めてもいい。紬が望むなら…。

紬だけの”スグル()”でもいいんだ」



小さく言って、部屋を後にした。

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