白鳥学園、いきものがかり
「何故ここであの男の名前を出すのです?」
笑ってるように見える。
でも目は笑ってない。
マスクの下はもっと笑ってないと思う。
「もしかしてわざとなのかなぁ?あはっ、だとしたら紬ちゃんって計算高いねぇ~」
計算…?
どういう事?
「変なつもりじゃなくて、」
みんなに安心して欲しくて言ったつもりだった。
──────ピリリリ、
大きな音と電光掲示板の文字。
「電車が来ましたね。行きましょうか」
「今日はちょっと余裕だったねぇ~」
両側の二人に手を引かれ立ち上がった。
同じペースで歩いてくれるし、エスコートもしてくれる二人。
だけど違う。
私と目を合わせてくれなかった。
ッ…私、二人に嫌な思いになるような事…してしまったの?
満員電車に乗り込み、学校まで開くことがないドア側に立たせられる。
正面には凪。
隣には翔がいた。
「……あの、」
「人来るからもうちょっと寄るね」
一歩だけ近づく翔は窓の方を見ている。
…私を見てくれない。
目の前にいるはずの凪も。
何故か遠く感じる…。