ため息のわけを教えてください
「橋爪さんも、タクシーで帰るんですか?」
「他人のことよりも、まずはとにかく、まずは自分のことを考えてくれ」
 そうだと言わないということは、きっとどこかで時間を潰すか、泊まるつもりなのだ。

「わたし、付き合います」
「だめだ」
 彼は振り返りもせずに、言い切った。

「余計なお世話かもしれんが、気軽に男についていこうとするんじゃねえ。勘違いする馬鹿がいたらどうすんだ。……カレシいんだろうが」
 一体どこから、いもしないカレシの存在が湧いてきたのだろう。

「そいつもこの辺で仕事してるんだろ。こんな時間によその男と歩いているのを知ったら、何を思うか」
「まさかそれが、横に並んで歩いてくれない理由ですか」
 わたしは後ろから、大福さんの腕を掴んだ。それが予想だにしない行動だったのか、彼はびくりと肩を揺らした。

「わたしカレシ、いないです。ずっと」
 手はあっけなく振り払われてしまったが、少しだけ歩みを速めると、横になって並ぶことができた。追いかけっこだけはもう終わりにしてくれたようだ。
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