ため息のわけを教えてください
「この名前って」
「なんでもいいかと思ってよ。別に他に誰と繋がる予定もねえし、いちいち考えるのも面倒だしな」
案外、あの呼び方も嫌じゃなかったのだろうか。彼の目線はレジ横のケースに並んでいる肉まんの方を向いたまま、動かない。
「SNSフォローしますね、仕事終わったらすぐに」
「俺もメッセージアプリの方に何か送っておくわ」
少しは気持ちがあると思ってもいいのだろうか。わたしが教えたのは、バイトの仲間たちで繋がっている無言アカウントではない方だ。普段何をやっているのかがバレてしまうが、自分を隠したまま、彼が何者なのかを知ろうとするのはフェアじゃない。
「じゃあ」
品出しをしていた同僚がレジの方に近づいてくると、大福さんはさっと袋詰めされた商品を手に取って、背中を向けた。
その時ちょうどバーコードさんが入店してきた。店を出ようとした大福さんの前で足を止めて、何かを耳打ちしている。バーコードさんは、ひっひ、と一人で引き攣れた笑い声を立てながら、レジの前を通り越す。今日も耳には銀色の玉が詰まっている。冷蔵棚から幕の内弁当を取ってレジの前に立った。
「なんでもいいかと思ってよ。別に他に誰と繋がる予定もねえし、いちいち考えるのも面倒だしな」
案外、あの呼び方も嫌じゃなかったのだろうか。彼の目線はレジ横のケースに並んでいる肉まんの方を向いたまま、動かない。
「SNSフォローしますね、仕事終わったらすぐに」
「俺もメッセージアプリの方に何か送っておくわ」
少しは気持ちがあると思ってもいいのだろうか。わたしが教えたのは、バイトの仲間たちで繋がっている無言アカウントではない方だ。普段何をやっているのかがバレてしまうが、自分を隠したまま、彼が何者なのかを知ろうとするのはフェアじゃない。
「じゃあ」
品出しをしていた同僚がレジの方に近づいてくると、大福さんはさっと袋詰めされた商品を手に取って、背中を向けた。
その時ちょうどバーコードさんが入店してきた。店を出ようとした大福さんの前で足を止めて、何かを耳打ちしている。バーコードさんは、ひっひ、と一人で引き攣れた笑い声を立てながら、レジの前を通り越す。今日も耳には銀色の玉が詰まっている。冷蔵棚から幕の内弁当を取ってレジの前に立った。