ため息のわけを教えてください
 橋爪も手際に良さに気付いてからは、彼女のレジに並んでいた。はにかんだ笑みに惹かれた。それは自分だけではなく、他の常連客もなのだと気付いたのは割と最近の話だ。

 見覚えのある男とすれ違った。振り返って確認しようとすると、コンビニに吸い込まれていく。いつもホットショーケースの物を買い、麻依と話をする機会を伺っているスーツ姿の優男だった。

 まさか奴も仕事上がりの麻依を待ち構えようという魂胆なのだろうか。気になって通り過ぎた道を折り返す。コンビニを覗くと案の定、二人はカウンター越しに話をしている。

 人の気配に気づいたのか、麻依が入り口の方を向いた。覗き見ていると思われたくなくて、橋爪は店に入った。

い らっしゃいませ、の声の調子がおかしいが、橋爪はカウンターを見なかった。会話を盗み聞きしようと耳を傾けながら店内を歩いているうちに、大福を手に取っている。冷蔵庫に向かうのは無意識の動作だった。コーヒーを取ってレジに向かう頃、男は「じゃあ頑張ってね」と笑顔でカウンターを離れた。
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