悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
その日からさっそくギルによる言語や算数の勉強に加え、テーブルマナーとダンスのレッスンが始まった。

ナタリアの一日は瞬く間に多忙となる。

夕方になって、散歩に行こうとレオンに誘われた。

ナタリアの部屋が急遽本宮に移動になったことに、レオンも驚いていた。

「僕ですら三階には数えるほどしか行ったことがないのに、いったいどういう風の吹き回しだろう? 前に僕がナタリアの部屋を本宮に移すよう父上に進言したときは、あれほど渋ったのに。ナタリアとも、これまでほとんど関わろうとしなかったじゃないか」

レオンは、ナタリアがリシュタルトに助けられたことを知らない。

車両から間一髪のところで逃げ出したあと、ナタリアを探していたレオンとギルが慌ててナタリアのもとに駆け付けたが、その頃にはもうリシュタルトはロイを連れて姿を消していたからだ。

「とにかくナタリアの部屋が近くなったのはうれしいけど、ナタリアまでみっちり教育されては、僕たちが会える時間が減るじゃないか」

「お兄様、寂しがらないで」

ナタリアはレオンにぎゅっと抱き着くと、上目遣いで兄を見つめる。

「私、がんばってお勉強して、毎日早く終わらせます。そうして、少しでもお兄様と一緒にいれる時間を作りますね」

にっこりと最上級の笑みを浮かべるナタリア。

これからはリシュタルトの攻略をメインに行っていくが、レオンの攻略も継続したほうがいいだろう。

彼を味方につけとけば、いざというときに何かと役に立つだろうから。

悲運が待っている身の上としては、最大限、事は慎重に進めなければならない。

思った通り、兄は頬を紅潮させてデレ顔になった。

「ああ、ナタリア。俺の天使。そんなかわいいことを言われては、父上を許すしかないじゃないか」

そしてナタリアを抱き上げると、少々息苦しいほどにむぎゅっと抱きしめてきたのである。
< 44 / 251 >

この作品をシェア

pagetop