悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
野生のドラドが住み着いた山は、村から歩いて十分もかからないところにあった。

山の入り口には草が生い茂り、鬱蒼としている。

背の高い木々が山々を覆っていて、太陽の光が遮られており、物々しい空気が漂っていた。

リシュタルトの銀色の尻尾が、痙攣するように微かに動いた。

「お父さま、どうかされましたか?」

「――いや。ドラドは、この山の中にいるのか?」

ナタリアを抱きかかえたまま、リシュタルトがダスティンに問いかける。

「そうです。もっとも我々がここにいては、出てくることは滅多にありませんが。村を襲ったのも夜でしたし」

ダスティンがかぶりを振った。

(そっか。そう簡単に見れるものじゃないのね)

ついにドラドが見れると張り切っていたナタリアは、心の中でがっかりする。

そのとき、ガサッと茂みが揺れる。

風に煽られたわけではない、明らかに生物が蠢いたような動きに、辺りにいた一同がざわつく。

「まさか、ドラドか?」

「皇帝陛下の匂いにつられ、出てきたのかもしれないぞ」

皆が一斉に茂みを注視した。

――ガサッ、ガサガサッ!

今度は目に見えて茂みが動いた。

リシュタルトが、ナタリアを抱く腕に力を込める。

運良くドラドを見れるかもしれないという期待から、ナタリアの胸がドキドキと早鐘を打った。

茂みから、ついに影が姿を現す――。
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