悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
「クウン」

ひょこっと顔を出したのは、真っ白なふわふわの毛で覆われたなんともかわいらしい仔犬だった。

ロイよりもひとまわり小さく、短い脚をパタパタと動かし、リシュタルトの前に出てくる。

ハッハッと舌を出し、尻尾を盛んに振る姿は、ボールを投げてとせがむときのロイそっくりだ。

「仔犬? かわいい……」

ナタリアをじっと見つめるつぶらな瞳。まるで綿あめのようなふわふわの身体。

あまりにも愛らしいその姿に、ナタリアの胸がきゅうんと鳴る。

「ドラドの子供だ」

リシュタルトが言った。

「え? 子供?」

ナタリアは驚きの声を上げる。

あの巨獣ドラドの子供が、こんなトイプードルみたに愛らしいだなんて。

「おおっ、子ドラドだ。子供もいたのか」

「しかもあの警戒心の強いドラドが、懐いているようだぞ。さすが皇帝陛下だ」

リシュタルトはじっとドラドの子供を見つめ、それからナタリアを見た。

そして「俺じゃないな……」とボソッとつぶやく。

「このドラドは、お前に会いたくて出てきたようだぞ」

ナタリアは目を見開き、もう一度ドラドの子供を凝視した。

たしかに濁りのない真っ黒な瞳は、まっすぐにナタリアを見つめている。

ロイにしろドラドの子供にしろ、現世でのナタリアは獣に好かれる体質らしい。
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