溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 悠里は俺の早とちりにクスクス笑いながら、言う。

「男性に泣かされた経験は、ないですよ。維心さん以外には」

 俺は一瞬で笑みを消し、その場に土下座したくなるほどの後悔に苛まれる。しかし、悠里は晴れやかな笑みでこう続けた。

「こんなに好きになった相手、維心さんが初めてだから」
「悠里……」

 きみはいつもそうやって、俺の胸に穏やかな幸せを運んでくる。

 なにもかもを奪いたくなるような激しい恋情とは別の、優しくあたたかく、やわらかい感情……これが愛なのかと初めて思ったのは、彼女が熱を出した時だ。

 それまで恋心と肉欲をなかなか切り離せずにいた俺だが、眠る彼女の手を握り、唇を触れ合わせるだけでも、愛しい幸福感に包まれた。

 軽井沢に行った時もそう。パンを食べた時も、神社にお参りした時も、花火をした時も、悠里がそばにいて笑っていればそれでなにもかも満たされた。

 そして今も――きみが隣で笑っていてくれる、それが俺のなによりの幸せだから。

 俺は彼女の耳の脇に手を差し入れ、瞳を覗いて問う。

「これからもずっと、俺のそばにいてくれるか?」
「はい。愛しています、維心さん」
「ありがとう。……愛しているよ、俺も」

 ゆっくり顔を近づけていくと悠里は自然と目を閉じ、俺たちは今までで一番心を満たす、優しいキスを交わした。

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