溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
俯きがちに維心さんの後に続いて歩き、少し先に停めてあった彼の車のトランクに荷物を載せてもらうと、それから自分たちも車に乗り込んだ。
しゅんとしたままお行儀よく助手席に座っていたら、運転席の維心さんがいきなり身を乗り出してきて、ドキッと鼓動が跳ねた。
「悠里、シートベルト忘れてる」
淡々と告げた彼が私の左肩の位置にあるベルトを引っ張り、なんだ、シートベルトかと気が抜けたのと同時に、ふと間近で彼と視線が合った。
温度のなかった彼の瞳が、微かに熱を持って揺れる。
どうしてそんな目を? そう問いかけたくて小さく開きかけた唇は、次の瞬間彼によって塞がれていた。
ふわりと私を包み込む、大人っぽいフレグランスの香り。唇に触れる、やわらかな熱。
甘くて心地よくて、まるで夢の中の出来事みたいに現実味がないけれど、まぶたを閉じることも忘れた私の瞳には、長い睫毛を伏せた維心さんのどアップが間違いなく映っている。
キス、されてる……。
私がようやく理解した頃、維心さんはゆっくり唇を離し、ひと言「すまない」と呟いた。
なんで謝るの? 私、うれしかったのに。