溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「お、お疲れ、早坂」
「お疲れさま。明日からお休みだね。元木くんはどこか行くの?」
「いや、別に。俺、一緒に出かけるような彼女もいないし。つーかそもそも……めっちゃ不毛な片想いだし」
微妙に私から目線を外し、ボソボソと呟く元木くん。
「そうなんだ。つらいね」
不毛な片想いなら、私と一緒だ。そう思いつつも口に出すわけにはいかないので、ただ苦笑して相槌を打つ。
「まぁ、それなりにな。けど俺、自分より相手がつらそうにしてる方が断然つらいんだ。だからさ、早坂」
元木くんがそう言って、すう、と大きく息を吸い込んだその時だった。
「私の妻になにか用だろうか」
元木くんの後ろから近付いてきた維心さんが、普段よりワントーン声を低くしてそう言った。
さっきまでその場所にいたはずの梶原さんは、なぜかデスクの陰にしゃがんで頭を抱えている。
「ぶ、部長……!」
元木くんはそう言ったきり、口をパクパクさせるばかりで言葉を継げなくなった。維心さんはそんな彼を無視してこちらに近づいてくると、私の肩にそっと手を置く。