君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
「香澄ちゃん、家事全般が得意だって前に言ってなかった?」
「得意というか、一通りのことはできます」
つい最近、社長と昼ご飯を一緒に食べた時に、世間話がてら言った記憶があるけど……。
「香澄ちゃんに海里の身の回りの面倒を見てもらえてら助かるんだけど。部屋の掃除とか食事の世話をお願いできないかしら。仕事の延長だと思ってくれていいわ。その分、給料はしっかり上乗せするから」
給料上乗せ?
魅力的な提案に心が揺れる。
事務員の給料なんてたかが知られている。
人並みには生活していけるけど、なかなか貯金ができない。
そんなに物欲はなくても、将来のことを考えたら出来るだけ蓄えはあった方がいい。
それに、わざわざ社長が指名してくれたということは、私のことを信用してくれているということだよね。
でも、ひとつ気がかりなことがあるけど……。
いろいろと考えた末、私の返事は決まった。
「分かりました。やります」
「ありがとう!本当に助かるわ」
社長が嬉しそうに言い、副社長に“してやったり”といった視線を向ける。
「ちょっと伊藤さん、本気?嫌なら断ってくれていいんだけど」
「いえ、大丈夫です」
「香澄ちゃん本当に大丈夫?」
美桜さんが心配そうに聞いてくる。
「はい。一人暮らしをしているので料理洗濯掃除など家事全般こなせるので大丈夫です」
私の言葉に副社長は困惑の表情を浮かべていた。