エル・ディアブロの献身
蓋を閉じてガムテープを

 ピー、と鳴り響いたそれに急かされるように脱水まで完璧にし終わった洗濯物を干して、掃除機をかけた。
 お風呂とトイレも掃除して、遅めの朝食を食べて、いつもは通販で済ませる買い置きを、自分の足でしようかと在庫を調べたけれど、買い足さなくちゃいけないものは何もなかった。
 あの日から、ずっと施設にいる母との面会も予約制のため、時間があるからと突然訪ねるなんてことはできない。
 とはいえ、この快晴。家でゴロゴロして過ごすのはひどく勿体ない気がして、特に目的もないけれど、とりあえず外に出た。

「…………プライベートなので、」
「俺だって、今は客じゃない」

 その判断が間違いだったと気付いたのは、最寄り駅にたどり着いた、その瞬間だった。

「待ち伏せてたのは、ごめん。気持ち悪いよな……でも、こうでもしないと話せそうになかったから、」

 待ち伏せ。
 行く手を阻む目の前の人物が発したその言葉に、より一層、警戒心が高まる。

「昨日も、本当にごめん。店で大きな声出した上に、その、昔のこと、口走って、」

 私の前に立つその人は、一和理さんが懸念する昨夜のことの、発端となった人だ。

「……別に、いいよ。もう、関わらないでくれたら、それで」

 およそ四年前、金づる呼ばわりされた私だけれど、残念ながら、もうあなたの望むような金づるにはなれないんだよと、表向きの言葉に混ぜて、そっと吐き出した。
< 7 / 55 >

この作品をシェア

pagetop