溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
『不躾なお願いをしたことは、自覚しています。でも、そのくらい切実なんです』


悲愴に顔を歪めて唇を噛んだ私に、彼はふと眉根を寄せた。


『初対面の俺に、不躾と承知でお願いしてくるほどの?』


どこか胡散臭そうな目で見られ、私は何度も首を縦に振って肯定した。
彼は、苦い顔をして『ふう』と息を吐くと。


『それなりに理由はありそうだな。詳しく聞かせてもらおうか』


そう言って、キャンパスからもほど近いカフェに、私を連れて移動した。
万が一にも、知っている人に見られたり、話を聞かれたりしたくないと、キャンパス内で説明するのを拒んだのは、私だけど……。


学内一のイケメンと、店内の奥まったテーブル席で、向かい合って座っているという非日常。
いろんな意味で汗が止まらない。
額とこめかみ、首筋の汗をしきりにハンカチで拭きながら、グランデサイズのアイスカフェラテで喉を潤し、やっとたどたどしく切り出した。


『実は私、大学を卒業したら、政略結婚させられるんです……』


私の父は、厚生労働省の官僚だ。
お役人らしい、昔気質で厳格な人。
仕事の関係で華やかなパーティーに出席することも多かったけど、家族同伴の時でも、太めで冴えない見た目の私を連れて行くことはなかった。
コミュ障気味で社交性のない私は、ずっと父から疎んじられていたのだ。
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