溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
『茉帆は使い途がない。このままじゃ、売れ残るのが関の山だ。せめて若さが武器になるうちに、親のためになる結婚をしろ』


まるで念仏みたいに言われ続け、私は大学卒業後に式を挙げる前提で、二十五歳も年上の中堅医薬品メーカーの役員と、お見合いさせられたのだ。
それが、つい二週間前のこと……。


何度もつっかえながら、政略結婚に関する概要を説明すると、彼は私の前でがっくりとこうべを垂れていた。


『……で? 親に勝手に決められた結婚を回避するために、他の男と既成事実でも作ろうと?』


忌々し気に顔を歪める彼に、私は『いえ』と勢いよく首を横に振って否定した。
私の返事が予想外だったようで、彼は大きく首を傾げた。


『逃れようなんて思ってません。父の言う通りだとわかってますから、売れ残って迷惑をかけるくらいなら、今のうちに嫁いだ方がいい。でも……せめて一度くらい、ときめきのようなものを知っておきたくて』


膝に両手を置いて、グッと前のめりになる私に、ちらりと目を向けてくる。


『ときめき?』

『私は、恋人がいたことありません。その、つまり、恋の……』

『恋愛経験がないのは、言わせなくても十分わかる』

『う』


あっさりと見透かされ、その上先回りして答えを遮られ、私は口ごもった。
妙な気まずさに、無駄に目を泳がせていると。
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