溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
振り返る間もなく、後ろからギュッと抱きしめられ……。


『……!』


条件反射で、息を止める。
彼のさらりとした前髪が頬をくすぐり、ボッと音が出そうなほど顔が茹った。


『あっ、あのっ……』


私は、喉に声を引っかからせた。


『わ、わわわ私っ……すごい汗掻いてて。先に、シャワーを……』


とにかく自分を落ち着かせたくて、とっさにそんな言葉を挟んだものの、こちらから丸見えのシャワールームが視界の端に映り、途中で詰まった。
彼は私の提案に、『ああ』と相槌を打った。
ところが。


『二時間しかないから、もったいない。俺は別に、気にならないから』

『えっ!?』


ギョッと目を剥いて振り返った私を、肩越しに覗き込んできた。
そして、次の瞬間――。


『っ……!』


しっとりと弾力のある感触に唇を塞がれ、私は大きく目を見開いた。
キスされている、とわかったのは、彼の綺麗な顔が、焦点が合わないほど近くにあったのと、唇を柔らかく食まれる、知らない感覚のせい。


『んっ……ふあっ……』


背筋をゾクゾクと寒気が走り、私は無意識に唇を引き結んだ。
彼は薄く目を開け、その黒い瞳で、超至近距離から私を射貫いてくる。


『唇、開けて。呼吸は鼻でするんだよ』

『ふ、ふゎ……』


頭の中が沸騰して、思考回路がビシッと寸断される。
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