溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
だけど、次の瞬間、彼の大きな手が私の胸に触れた。


『っ!!』


フニフニとやや強めに揉まれる初めての感覚に、なにかが背筋を駆け抜ける。
脳天を貫いたのは、官能の痺れだったか、それとも恐怖だったか――。


『っ……!』


ビクンと大きく身を震わせ、全身が強張った途端。


『このへんまでにしておこうか』


彼は拍子抜けするほどさらりと言って、私から唇を離し、手を引っ込めた。


『……え?』


私は膝からガクッと力が抜けて、その場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。


『ど、どうして』


彼を見上げて、呆然と呟く。


『恋のときめきを知るよりも、まず理不尽な結婚に反抗する方が先じゃないか?』


彼は黒いデニムのウェストに親指を引っかけて、惚けるように小首を傾げた。
くるっと背中を向けてソファから荷物を持ち上げ、肩にかけると、私を肩越しに見下ろしてくる。


『そんな横暴な政略結婚。いくら親でも、人権無視の侮辱だろ。なのにどうして、言われるがまま受け入れようとする? 俺には理解不能』

『っ……』


無意識に唇を手で押さえた私を、ふっと吐息を漏らして笑うと、


『キスでいっぱいいっぱいのくせに、ただの通りすがりみたいな男と最後までできる? 君には無理だよ」


それだけ言って、スタスタと歩き出した。
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