溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
自分のうるさすぎる心拍のおかげで、彼の言葉は私の耳に断片的にしか届かなかった。
でも、意地悪なことを言っているのは、目尻が好戦的に上がったのを見れば、よくわかる。
「あの時は、キスだけで震えてたっけ。今の君じゃ、もうあんな反応は見られないのかな。……残念だな」
皮肉交じりに揶揄する男らしい薄い唇が、私の目の前で動いている。
そう、驚くほど近くで……その時やっと、ものすごく至近距離にいることに気付いた。
「っ」
慌てて顔を背け、距離を取ろうとする。
だけど、ここでもまた、私の行動は先回りされた。
頭の後ろに彼の手が回ったかと思うと、強い力でグイと引き寄せられ――。
「っ、やっ……!」
私の短い叫びは、唇を塞いだ温かく柔らかい感触のもので、消し去られた。
隣の席との間隔はかなり広く取られていて、他の客に私のくぐもった声は届かない。
仄暗いラウンジのカウンター席で、二つの影が一つになったことにも、誰も気付かない。
私たちがキスしているのも、かなり寄ってこないとわからないだろう。
「んっ……ちょっ!」
慌てて首を捻って逃げようとしたものの、後頭部をがっちり押さえられていて、身動きできない。
でも、意地悪なことを言っているのは、目尻が好戦的に上がったのを見れば、よくわかる。
「あの時は、キスだけで震えてたっけ。今の君じゃ、もうあんな反応は見られないのかな。……残念だな」
皮肉交じりに揶揄する男らしい薄い唇が、私の目の前で動いている。
そう、驚くほど近くで……その時やっと、ものすごく至近距離にいることに気付いた。
「っ」
慌てて顔を背け、距離を取ろうとする。
だけど、ここでもまた、私の行動は先回りされた。
頭の後ろに彼の手が回ったかと思うと、強い力でグイと引き寄せられ――。
「っ、やっ……!」
私の短い叫びは、唇を塞いだ温かく柔らかい感触のもので、消し去られた。
隣の席との間隔はかなり広く取られていて、他の客に私のくぐもった声は届かない。
仄暗いラウンジのカウンター席で、二つの影が一つになったことにも、誰も気付かない。
私たちがキスしているのも、かなり寄ってこないとわからないだろう。
「んっ……ちょっ!」
慌てて首を捻って逃げようとしたものの、後頭部をがっちり押さえられていて、身動きできない。