溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
ところが。
「ちょっと待て」
「えっ」
後ろから肘を引いて止められ、反射的に振り返った。
社長が、ゆっくり椅子から立ち上がる。
「いくらなんでも、これじゃみっともなくて帰れない」
頭一つ分高い位置からボヤくように言われて、不覚にも言葉に詰まった。
だけど。
「う、上着は無事じゃないですか」
虚勢を張って返すと、社長は眉尻を下げて深い溜め息をついた。
「梅雨明けしてから、連日の猛暑。このくそ暑い熱帯夜に、ビシッとスーツで帰れと?」
「日中は、いつもビシッと着てらっしゃるじゃ」
「日中は仕事だろ。プライベートのディナーの帰りに、なんでこんなもの着て帰らなきゃいけない」
揚げ足を取って返す私に、ふんと鼻を鳴らして言って退ける。
さすがに私も口ごもり、目線を揺らした。
「俺が誘ったんだ。食事代はいらないし、クリーニング代も。それより、染み抜きしてくれないか」
「え? そ、それは……でも、ここで?」
腰を引かせながら聞き返すと、彼は私の肘から手を放し、腕組みをしてにっこり笑う。
「一緒に来てくれ」
みっともない、と言ったわりには、上着は肩から背中に下げるだけ。
真っ赤に染まったシャツを隠しもせずに、私の横を通り過ぎ、スタスタと歩き出した。
「ちょっと待て」
「えっ」
後ろから肘を引いて止められ、反射的に振り返った。
社長が、ゆっくり椅子から立ち上がる。
「いくらなんでも、これじゃみっともなくて帰れない」
頭一つ分高い位置からボヤくように言われて、不覚にも言葉に詰まった。
だけど。
「う、上着は無事じゃないですか」
虚勢を張って返すと、社長は眉尻を下げて深い溜め息をついた。
「梅雨明けしてから、連日の猛暑。このくそ暑い熱帯夜に、ビシッとスーツで帰れと?」
「日中は、いつもビシッと着てらっしゃるじゃ」
「日中は仕事だろ。プライベートのディナーの帰りに、なんでこんなもの着て帰らなきゃいけない」
揚げ足を取って返す私に、ふんと鼻を鳴らして言って退ける。
さすがに私も口ごもり、目線を揺らした。
「俺が誘ったんだ。食事代はいらないし、クリーニング代も。それより、染み抜きしてくれないか」
「え? そ、それは……でも、ここで?」
腰を引かせながら聞き返すと、彼は私の肘から手を放し、腕組みをしてにっこり笑う。
「一緒に来てくれ」
みっともない、と言ったわりには、上着は肩から背中に下げるだけ。
真っ赤に染まったシャツを隠しもせずに、私の横を通り過ぎ、スタスタと歩き出した。