溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
男らしく隆起した喉仏も、首筋から鎖骨にかけてのシャープなラインも、壮絶な男の色香が匂い立つ。


「っ!」


顔はがっちり正面に固定されているけど、なんとか黒目を動かして視線を外した。
視界の端に、社長が不服そうに眉根を寄せる様が映り込んだ。


「ずっと、聞きたかった。どうして君、俺に頼んだんだ?」


わざと一語ずつ区切って、私の意識に質問を刻みつける。
私が、きゅっと唇を結んだままでいると。


「初めての相手に、俺を選んだ理由は?」


私の髪を一房掴み、自分の口元に持っていった。
彼が髪に唇を落とす様にどぎまぎしながらも、返答を拒否して唇を噛む。
返事を待つようなわずかな間の後――。


「……そ。じゃあ、先に進めてるから、返事、よ~く考えて」


不遜な言葉と同時に、社長が私のスーツの襟に手をかけた。


「っ、え?」


聞き返す間に両側に開かれ、条件反射でまっすぐ彼を見上げる。


「ちょっ、なにを」

「こんな時間にノコノコ男の部屋に来ておいて、『なに』はないだろ。子供じゃないんだから」


皮肉げに上がる口角を目にして、私はごくりと唾を飲んだ。


「なあ。なんでそんなに綺麗になった?」


どこかボヤくような口振りで、私のブラウスのボタンに手をかける。


「っ、社長っ」
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