あの日、小猫と出会ったから
小猫の正体
 昼飯は道中屋台で食べることにして、俺とリフは早めに家を出た。秋晴れの空、良い天気だ。
 アイも連れて行くとリフは言ったが、アイは一足先にフラリと出かけてしまったのでそれは叶わなかった。
「しかたないだろ、あいつ野良猫なんだし」
「でも僕、アイにも助けてもらったから、お礼したかったな」
 猫にまでお礼とか、ほんと律儀な奴だ。天然とも言う。
「そういや、お前幾つなんだ?」
「十」
「えっ」
 思わず驚きが声に出た。てっきり七、八歳だと思っていた。もっと下かなとさえ思った。
 リフは俺を見上げて、寂しそうに笑んだ。
「子どもっぽいって思ったんでしょ? 背も小さいし、喋り方も喋る事も幼いって」
 ここは言い訳せず、素直に認めて謝った方が傷を広げないだろう。
「すまん」
「いいの、気にしないで。みんなそう言うし、自分でも変だって思うから」
 ふふ、と小さく笑ってリフは俯く。
「なんかね、僕はいろんな事がみんなと違うみたい。僕は、出来損ないなの」
 幼い横顔に似つかわしくない、自嘲的な笑み。俺は奴の頭をぽんと撫でる。
「そんな風に言うこと無いだろ。お前はお前、他人は他人なんだから」
 リフは立ち止まり、俯いたままぽつりと呟いた。
「でも、人と違うと否定されることって多いよね」
 悲しそうな声。ついと俺を見上げて、続ける。
「ジェイミーの目だって、そうでしょ?」
 切ない色を湛えた瞳に、返す言葉が見つからなかった。
 リフの言う通りだ。ただ、片方ずつ色が違うだけ。なのに否定される。厭われる。それが嫌で、避けられるのが怖くて。俺は本当の自分を隠して生きている。自分は自分と割り切れぬまま。
「……どうして、なのかな」
 どうして、なんだろう。
 ただ、他人より少し幼いだけ。ただ、周りとほんの少し違うだけ。その違いは本当に些細なもの。なのに否定されるのはどうしてなんだろう。
 リフは答えを期待していなかったらしく、明るい声で話題を切り変えた。
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