あの日、小猫と出会ったから
「それより、ジェイミーは幾つなの?」
「俺? 多分十四くらい」
「多分って。自分の歳忘れちゃったの?」
「お前と違って記憶力無いんだよ」
 適当にはぐらかしておく。正直、うろ覚えなのだ。多分十四だと思うが、確証はない。養護院に戻れば確認できるけど、そこまでして確かめるほどのものではない。
「じゃあ、ジェイミーは僕の兄様と同い年なんだね」
 嬉しそうに笑う海色の瞳に、青空が映った。澄んでいて、綺麗だと思った。


 通称屋台通りに寄った。安くてそこそこ美味い店が多い。丁度昼食時間だからか、結構な人で賑わっている。小柄なリフとはぐれないよう、手をつないで歩いた。何が楽しいのか知らないが、リフはご機嫌でハナウタを歌っている。
 よく行く屋台に向かい、リフにメニューを見せた。好きなものを食え、と言ったら、リフは隣の屋台の綿飴を指差した。
「あれがいい」
「あれは飯じゃない。先ずは飯を食え」
「ええー、あれがいいよ、ジェイミー。だめ?」
 小首傾げておねだりして来る。甘やかすなと言う心の声が聞こえたが、キラキラした子猫の愛くるしさには抵抗できそうにない。リアルに弟妹がいたら、俺はダメ兄貴だった可能性大だ。
「わかった、後で買ってやる。だから先に飯を選べ」
 やっと綿飴からメニューに視線を戻し、リフはホットドックを選んだ。
「これ初めて見る。面白い食べ物だね」
 このお坊ちゃんめ。普段どんな飯食ってんだ。
 ホットドックと飲み物を二人分買って、隣の屋台に寄る。飴屋の屋台の店主は、親しくはないが顔見知りだ。
「ジェイミー、連れが居るなんて珍しいね。甥っ子かい?」
「まあ、そんなとこ」
 俺が適当に濁すと、隣りからリフが元気に補足訂正してくれた。
「違います。僕は甥っ子じゃなくて、ジェイミーのお友達です!」
 得意げに宣言するリフに、飴屋の店主は目を点にした。さっき飯を買った屋台の店主は微妙な笑いを浮かべて俺とリフを見比べている。反対側の屋台のおばさんが、リフと俺の格好の違いをまじまじと観察して怪訝そうな顔をする。まずい、何か勘繰られている気がする。
「……随分な歳の差のお友達だね、ジェイミー」
「精神年齢が一緒なんだ。これ、釣りなしね。ありがと」
 綿飴を受け取り、リフの手を引いてそこを離れた。通りを抜けるまで無言で歩き、人がまばらになったところでリフに向き直る。
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