あの日、小猫と出会ったから
「あのな、リフ」
「なに?」
こんの世間知らずが。何でもかんでも正直に言えば良いってものじゃ無いんだよ――そう言いかけて、止めた。
『関係ないよ。同じ人間でしょ?』
リフは、俺と違って純粋だ。時に危なっかしいほど真っ直ぐだ。俺みたいにやましいことをしていない。俺と違って、汚れてない。
このまま、綺麗なままで居て欲しい。澄んでいるこの瞳を、濁らせてはいけない。
「なに? ジェイミー」
「いや……お前、ホットドックは知らないのに綿飴は知ってるのか」
無理矢理感のある話題転換に、リフは笑顔で答えてくれる。
「うん! 一昨年、親善訪問で父様の国へ家族で行った時、初めて食べたの。セルヴィおじさんの綿飴、とっても美味しいんだよ。それに、母様も父様も、綿飴には深い思い出があるんだって」
「へえ」
なんだ、そのシンゼンホウモンて。しかも、父様の国って事は。
「お前、ハーフなんだ」
そう言った途端、リフから笑顔が消えた。表情が強張った。
しかし、それは一瞬だった。何かまずかったかと考えるより先に、リフは再び笑っていた。
「うん。父様はね、ペルビアナの生まれなの。僕は、父様似」
「ふーん」
ところで、ペルビアナってどこの国だ。全然知らない。響き的には南国ぽい。
「ジェイミーはどっちに似てるの?」
「さあな。どっちの顔も覚えてないし、写真もなかった。お義理で一度会いに来た誰かが、瞳の色以外は母親に似てるっつってたけど」
俺が答えると、リフは気まずそうに俯いた。
「ごめん、僕……」
「いいって、気にすんな」
リフの頭をくしゃくしゃとして、俺は空を見上げる。
「俺の目、元は両方とも翠だったんだ。それは父親譲りらしい」
「そうなんだ。僕と一緒だね、父様譲りの瞳」
些細な類似点なのに、リフは妙に嬉しそうに微笑む。
『僕は、みんなといろんな事が違うみたい』
リフにとって他人と違う事がコンプレックスになってる分、誰かと一緒というのが嬉しいのかもしれない。
「ああ。一緒だな、お前と」
相槌を打つとさらに明るい笑顔になった。こっちまで嬉しくなる。やっぱり、小猫には無邪気な笑顔が似合う。
近くの公園に行き、ベンチに座って昼食を済ませた。噴水が高く上がるたびに歓声を上げたり、近寄ってきた鳩を追っかけて逃げられたりと、リフは楽しそうにしていた。出来ることならこのまま――なんて身勝手な思いを懸命に振り払う。
「そろそろ行くぞ」
「……うん」
それまでの笑顔が消えたものの素直に頷き、リフは俺の手を握って黙々と歩き出した。帰り道が分からないと言っていた割には迷いの無い足取りに、違和感を感じた。
「お前、本当は覚えてたのか」
「……うん」
言葉少なに答えて、奴は俺の手を強く握った。不安が伝わってくる。帰りたくなかったから、嘘を吐いたのだろう。
「大丈夫だ。お前が兄貴と仲直り出来るまでちゃんと一緒にいてやるから」
無言で頷き、リフは歩き続けた。
「なに?」
こんの世間知らずが。何でもかんでも正直に言えば良いってものじゃ無いんだよ――そう言いかけて、止めた。
『関係ないよ。同じ人間でしょ?』
リフは、俺と違って純粋だ。時に危なっかしいほど真っ直ぐだ。俺みたいにやましいことをしていない。俺と違って、汚れてない。
このまま、綺麗なままで居て欲しい。澄んでいるこの瞳を、濁らせてはいけない。
「なに? ジェイミー」
「いや……お前、ホットドックは知らないのに綿飴は知ってるのか」
無理矢理感のある話題転換に、リフは笑顔で答えてくれる。
「うん! 一昨年、親善訪問で父様の国へ家族で行った時、初めて食べたの。セルヴィおじさんの綿飴、とっても美味しいんだよ。それに、母様も父様も、綿飴には深い思い出があるんだって」
「へえ」
なんだ、そのシンゼンホウモンて。しかも、父様の国って事は。
「お前、ハーフなんだ」
そう言った途端、リフから笑顔が消えた。表情が強張った。
しかし、それは一瞬だった。何かまずかったかと考えるより先に、リフは再び笑っていた。
「うん。父様はね、ペルビアナの生まれなの。僕は、父様似」
「ふーん」
ところで、ペルビアナってどこの国だ。全然知らない。響き的には南国ぽい。
「ジェイミーはどっちに似てるの?」
「さあな。どっちの顔も覚えてないし、写真もなかった。お義理で一度会いに来た誰かが、瞳の色以外は母親に似てるっつってたけど」
俺が答えると、リフは気まずそうに俯いた。
「ごめん、僕……」
「いいって、気にすんな」
リフの頭をくしゃくしゃとして、俺は空を見上げる。
「俺の目、元は両方とも翠だったんだ。それは父親譲りらしい」
「そうなんだ。僕と一緒だね、父様譲りの瞳」
些細な類似点なのに、リフは妙に嬉しそうに微笑む。
『僕は、みんなといろんな事が違うみたい』
リフにとって他人と違う事がコンプレックスになってる分、誰かと一緒というのが嬉しいのかもしれない。
「ああ。一緒だな、お前と」
相槌を打つとさらに明るい笑顔になった。こっちまで嬉しくなる。やっぱり、小猫には無邪気な笑顔が似合う。
近くの公園に行き、ベンチに座って昼食を済ませた。噴水が高く上がるたびに歓声を上げたり、近寄ってきた鳩を追っかけて逃げられたりと、リフは楽しそうにしていた。出来ることならこのまま――なんて身勝手な思いを懸命に振り払う。
「そろそろ行くぞ」
「……うん」
それまでの笑顔が消えたものの素直に頷き、リフは俺の手を握って黙々と歩き出した。帰り道が分からないと言っていた割には迷いの無い足取りに、違和感を感じた。
「お前、本当は覚えてたのか」
「……うん」
言葉少なに答えて、奴は俺の手を強く握った。不安が伝わってくる。帰りたくなかったから、嘘を吐いたのだろう。
「大丈夫だ。お前が兄貴と仲直り出来るまでちゃんと一緒にいてやるから」
無言で頷き、リフは歩き続けた。