恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
自分のデスクへ戻ったタイミングでスマホが鳴り、副社長室へと呼び出された。
ノックをして「失礼いたします」と入室すると、部屋のソファーに腰をかけてタブレットを眺めていた副社長が顔を上げる。
「五時からの生放送だけど……」
副社長が喋り始めたので、私は扉のそばに立ったまま、あわててメモ代わりに使っている手帳を開いてペンを持った。
「はい、今日は人気の美顔器ですよね」
我が社はCSの放送枠を買い、ショッピングチャンネルで美容品を販売している。副社長が言っているのはその件だ。
今日は美顔器の紹介で、自社スタジオから十五分の生放送を予定しているのだが、なにかあったのだろうか。
「海老原はまだスタジオに一度も行ったことがないよな。今日一緒に見学に行かないか?」
入社してからしばらくは、副社長は私を“海老原さん”と呼んでいたけれど、いつの間にか敬称が消えて呼び捨てになった。
私も堅苦しくない呼び方のほうがいいので、今のほうが気さくで、距離が縮まった感じがする。
「ぜひ行ってみたいです。勉強になりますので」
「そう言うと思った」
ノックをして「失礼いたします」と入室すると、部屋のソファーに腰をかけてタブレットを眺めていた副社長が顔を上げる。
「五時からの生放送だけど……」
副社長が喋り始めたので、私は扉のそばに立ったまま、あわててメモ代わりに使っている手帳を開いてペンを持った。
「はい、今日は人気の美顔器ですよね」
我が社はCSの放送枠を買い、ショッピングチャンネルで美容品を販売している。副社長が言っているのはその件だ。
今日は美顔器の紹介で、自社スタジオから十五分の生放送を予定しているのだが、なにかあったのだろうか。
「海老原はまだスタジオに一度も行ったことがないよな。今日一緒に見学に行かないか?」
入社してからしばらくは、副社長は私を“海老原さん”と呼んでいたけれど、いつの間にか敬称が消えて呼び捨てになった。
私も堅苦しくない呼び方のほうがいいので、今のほうが気さくで、距離が縮まった感じがする。
「ぜひ行ってみたいです。勉強になりますので」
「そう言うと思った」