恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「あの、今日の予定ってどうなってたかな?」

 そうだ、副社長は三人で楽しく雑談をするために私のもとへ来たわけではない。
 なにか確認したいことがあったからなのに、すっかり健吾さんのペースにのまれていたと気がついた。
 私は秘書として急に我に返り、あわてて机の上にあるタブレットを拾い上げて今日の副社長の予定をチェックした。

「十六時に来客があったよね? その前に今から少しだけ出かけたいんだ。もちろん来客までには戻る」

「携帯が繋がるようにだけしていただければ大丈夫です。玄関にお車を回しましょうか?」

「海老原さんも一緒に来てほしい」

 てっきり私は留守番で、副社長だけが仕事を抜けるという話だと思ったのだけれど、私も一緒にだなんて、いったいどこへ行きたいのだろう?

「私も同行、ですか?……どちらへ?」

「同行ってほどではないよ。ちょっとプライベートな野暮用」

 こんな顔もすることがあるのだと、思わず副社長の柔らかい笑顔に見とれそうになった。
 笑うとイケメンに拍車がかかってキラキラとまぶしくて。女子社員に人気なのも素直にうなずける。

「どこ行くんだよ。俺も行く!」

「は?!」

 話を聞いていた健吾さんが一緒に行くと言いだした。「お前は暇なのか?」と副社長がはっきりと嫌そうな顔をしたけれど、健吾さんはお構いなしだ。

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