バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて


そう言われても分からないものは分からないし、もう笑うしかないです。




「そんな人に想ってもらっているって言うのに…」


「思ってもらってる?何が?」


「へ!?あ、いや別に何でもないよ」


「……そう」




突然焦ったマユに少しだけ違和感を覚えたけど、教えてくれるはずがないからあたしは訊くことを止めた。

それにしてもショーマが世界的バーテンダーか…。


それならショーマはこの日本って言う狭い国を出ても外国で勝負できるし、優雅に暮らせるはずなのにどうしてこんな隠れ家みたいなお店を作って働いているんだろう。


もっといいところで働けるはずなのに、どうして。
そんな疑問が脳内を埋め尽くした。


「ねぇ、この国じゃないといけない理由があるのかな?」


「え?」


「外国でお店を出せない理由があるのかな?」


「え、まってそれはショーマさんのこと?」


「そう」


「はぁ-…アンタそれは……あー、私の口からは言えない」




ふと気になって訊いてみたのにマユからは意外な答えが返ってきて私は目を丸くした。


私の口からは言えないってことは、マユはその“理由”を知ってるってわけで、幼馴染の私が何一つ知らないと言うこと。



なんだか、私の胸に小さな穴が開いたような気がした。




「そっか」





___…穴の開いたそこから、トプトプと何かが零れだす。


< 24 / 26 >

この作品をシェア

pagetop