おじさんには恋なんて出来ない
第五話 それは恋です
 ベッドの上でスマホを握りしめたまま美夜は悶えた。

 つい感情に流されていってしまったが、まさか本当に誘ってもらえるとは思ってもみなかった。日向は良識ある男性だし、突然そんな軽々しい行動をとったら軽蔑されると思ったのだ。

「……どうして誘ってくれたんだろう」

 ふと考える。日向はファンだ。しかもかなり年上と思われる。男性は皆若い女性が好きだというが、日向もそういうタイプなのだろうか。見た目と言動からは想像できない。

 今まで自分のファンになった男性は大多数が年上のおじさんだが、真面目に音楽だけを聞きにきてくれるファンは少ない。

 しかし日向は最初から違った。

 けれど、誘ったということは日向にも多少好意があったということだ。いや、ファンになるぐらいだからあったのだろう。

 しかしこの際そんなことはどうでもいい。日向はピアノが聴けるから誘ってくれたのだ。きっとそれだけだ。

 現に、メッセージのやりとりはすぐに途切れた。要件だけの短いメッセージはなんだか寂しいが、それは日向が誠実だからだろう。


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