とろけるような、キスをして。


 元々事務職をしていたため多少勝手が違う部分もあれど、慣れてしまえばそこまで難しいものも無い。


初日からスムーズに仕事が進んで、一安心した。


 昼休憩には校内にある食堂へ向かい、持ってきたお弁当を広げて食べた。


冬休み中だからまだ食堂自体はやってないけれど、自由に飲食できるため先生や職員の方たちはいつもここで食べているらしい。


千代田さんもお弁当のようで、お互いに美味しそうなおかずの作り方を聞いたりと楽しい時間。


 そんな時に、部活動の途中なのだろうか。廊下から「あ、深山先生いたー!」という生徒の声が聞こえた。



「いたいた。みゃ……野々村さん」


「……深山先生。どうしました?」


「一緒に食べようと思って。千代田さん、俺もご一緒していいですか?」


「もちろんです。どうぞ」



 修斗さんとは、仕事中は社会人として"野々村さん"、"深山先生"と呼び合い、ちゃんと敬語を使うことに決めた。


それは晴美姉ちゃんにも言えることで、学校では"四ノ宮先生"と呼ぶことにしている。


 結婚したんだから"広瀬先生"じゃなくていいのかと聞いたら、いろいろと面倒だし生徒も先生方も"四ノ宮先生"で言い慣れているから今年度はとりあえずこのままでいくんだと言っていた。


確かに修斗さんも田宮教頭も、ずっと"四ノ宮先生"って呼んでたっけ。


 とは言え、学校の職員は皆、私がこの学校出身で晴美姉ちゃんの従姉妹だということも修斗さんと仲が良いことも知っているため、呼び方を変えようが変えまいがあまり意味は無いのだが。


まぁ、生徒はそんなこと知らないし、さすがに生徒の前で"晴美姉ちゃん"と呼ぶわけにもいかない。


 一種のケジメというやつだ。

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