とろけるような、キスをして。



「こんなに顔真っ赤にして。俺のこと誘ってる?」


「ちがっ」



 なんてことを言うんだ。


 修斗さんの肩を押してどうにか離れると、目の前でクスクスと嬉しそうに笑い始める。



「ごめん。やりすぎた。ちょっとみゃーこ不足だったから会えて嬉しくて」


「……その言い方はずるい」



 そんなことを言われたら。


早く職員室に行かないといけないのに。



「……修斗さん」


「ん?」


「……ちょっと充電させて」



 その腕の中に、飛び込んでしまいたくなる。


ぎゅっと抱き着くと、修斗さんは驚きながらも反射的に私を受け止めてくれた。



「え、なにそれ、可愛い。やば。可愛い。え、やっぱり俺誘われてる?」


「……うるさい。ちょっと黙って」


「……はい」



 まともに会えなくて寂しかったのは私も同じだ。


いつもは修斗さんから抱きしめてくることが多いけど、今日は私から。


 甘い香りと大きな腕に包まれて、なんだか仕事の疲れが取れるようだ。


しばらく無言で、お互いの鼓動の高鳴りを聞きながら抱きしめ合っていた。


私の背中をトントンとする手に、無性に安心した。


 夕焼けはすでに地平線に向かい、窓の向こうは闇に向かってどんどん黒に塗りつぶされていく。


修斗さんの後ろに見える窓には、抱き合う私たちのシルエットがぼんやりと写っていた。


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