とろけるような、キスをして。



「……それって、修斗さんにって作って渡す子もいるんじゃない?」


「いや?どうだろう。確かにクッキーとかなら"いつものお礼"とか言ってたまにもらうけど」


「……」



 ……それは、お礼を口実に手作りお菓子を渡しているのではないのだろうか。


修斗さん、昔からモテるから。


 一度そう考えてしまうと、そうとしか思えなくて心の中をモヤモヤが埋め尽くす。


しかし、そんな私を見かねたのか修斗さんはフッと笑った。



「どうした?……もしかして、妬いてる?」



 認めるのが悔しくて、声は出さずに頷いた。



「やば。かわいいっ……」


「ちょっと!ちゃんと前見て!」


「いや今のはみゃーこが悪い。可愛すぎる」


「……」



 デレデレしながらこっち向かないで運転に集中していただきたい。


まさかヤキモチ妬いて、こんなに喜んでくれるとは思わなかったけど。



「……私もクッキー作るね」



 子どもみたいに対抗心を燃やして、そんなことを言ってみる。



「え?マジ?やった!楽しみにしてる!」



 そのたった一言だけで、心の中のモヤモヤがどこかに消えていくから我ながら単純だ。



「うん。焦げてもちゃんと食べてね」


「もちろん。みゃーこが作ってくれたものなら俺なんでも食べられるから」


「……バカ」



 でも、その気持ちが嬉しい。


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