とろけるような、キスをして。



「ちょっとお話があるんですけど、今お時間大丈夫ですか?」


「え、っと……、私は少しだけなら良いですけど、立花さんは?もう午後の授業が始まる時間だと思いますが」



 腕時計で時間を確認すると、昼休みが終わる五分前。


ちょうど良く予鈴が鳴った。



「体調が悪いから保健室行ってくるって友達に言いました。だから大丈夫です」


「……そう」



 私は教師じゃないから、それに対して何か言うべきなのかがわからない。


言ったところでこの子が聞いてくれるとも思えないが。


 せっかく買ったけど、お茶を飲むのはどうやら少しばかり後になりそうだ。


 立花さんに連れられて向かった先は、私の中ではお馴染みの旧校舎の図書室だった。


確かにここは人が滅多に来ないから、重要な話をするにはうってつけだろう。空き教室に行くよりも埃っぽくないし綺麗だ。


 中に入ったタイミングで、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。



「……それで、話というのは?」



テーブルにお茶を置く。


 ドアを閉めた彼女に問うものの、言いづらいのか下を向いたまま何も喋らない。


しかしここまでついてきた以上、話を聞かずに事務室に帰るわけにもいかない。彼女もそうだろう。


 多分良い話ではないだろうし、十中八九修斗さんとの関係を聞かれるのだろう。それはわかる。


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