とろけるような、キスをして。



"行くな"って。


"一人が寂しいなら、俺が一緒にいてやる"って。


"なんで一言だけでも相談しないんだ"って。


 どうしてあの時に、何も言えなかったんだろう。


 どうして、力一杯抱きしめてやれなかったんだろう。


突然一人ぼっちになって、寂しくないわけがない。幼い子どもならまだしも、高校生という多感な時期。人に頼るということを、躊躇してしまう年頃。


少し考えれば、すぐわかったのに。


 悩んでいる生徒の力になりたい。昔の自分みたいに、そっと背中を押してやりたい。そう思って教師になったはずなのに。



「……みゃーこがそう決めたなら、俺は何も言えねぇよ」


「うん」


「でも、俺はずっとみゃーこの味方だから、それだけは忘れんなよ。いつでも帰って来い」


「ありがとう、先生」



 俺は結局、自分の教師という立場を失うことを恐れて、ありきたりなことしか言えなかった。


本当は、多分もっと前から、みゃーこのことが好きだったんだと思う。


俺は教師だから。みゃーこは生徒だから。


自分の気持ちに重い蓋をして、自分でも無意識のうちに気が付かないようにしていたのだろう。


 そのことにようやく気が付いたのは、卒業式を迎えた後だった。


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