とろけるような、キスをして。



「……みゃーこ」



 そっと呼びかけるものの、みゃーこは特に反応しなかった。


隣に並ぶと、窓の向こうでは紅葉が綺麗に色付いていた。



「……ねぇ、深山先生」


「どうした?」


「……私、進学するの辞めて、就職する」


「は?だってお前ずっと……」


「いいの。……もう、いいの」



 みゃーこは、電車で一本で行ける距離にある国立大学を受験する予定だった。


そのために夏期講習も、その前の冬季講習も、もちろん毎日の授業も必死に勉強に取り組んでいたのを知っている。


 その合間にバイトに明け暮れて、"毎日忙しくてここに来ることは減っちゃったけど、でも充実してる"って笑っていたのに。


窓の外を見つめるみゃーこの目からは、光が消えていたように思う。



「もう、大学にも興味無くなっちゃったんだ」



 それが本当か嘘かなんて、わからなくて。


でもそれを追求できるほど、みゃーこが答える気があるとは思えなかった。



「……私ね、東京に行こうと思うの」


「……え?」


「……晴美姉ちゃんにね、"一緒に住もう"って言われた。けど断った」


「……」


「東京に行って、就職して働こうと思ってる」



 向こうなら、多分高卒でも働ける場所があるから。


そう言ったみゃーこは、目は笑っていないのに口元は微かに笑っていた。


 その時のみゃーこにとっては、それが精一杯の笑顔だったのだ。


 俺を安心させるために、歪に笑ったんだ。


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