とろけるような、キスをして。
二階にある三年生の頃の教室を覗くと、あの頃と変わらない空気が流れていた。
落書きされた机。チョークの粉が舞う黒板。
教科書を置いて帰るロッカー。冬になると電源が付く、大きなストーブ。
そこにあるものは何一つ変わってなくて。でもきっと、本当はあの頃と同じところなんて何一つ無くて。
今ここに通っている子たちの、新しい空気が流れているはずなのに。
どうしてだろう。何故だか無性にあの頃に戻りたくて、泣きたくなった。
「俺今、二年のクラスの担任なんだよ」
窓の外から、眼下に広がる部活動専用のグラウンドやコートで身体を動かしている高校生たちを眺めていると、隣に先生が並ぶ。
「……そうなの?新卒から三年間ずっと副担任だったのに?」
「そう。すごいだろ。出世したんだよ俺」
「ふふっ、それ出世って言うの?」
「当然。だって、俺学年主任もやってるから」
「え、学年主任!?先生が!?」
「ま、押し付けられただけだけど。でも出世しただろ?」
「うん。すごいね!」
新卒だった先生が、まさか七年後に学年主任を任されているなんて。
押し付けられたなんて言ってるけど、先生は昔から責任感は強かったように思う。
だから、なんだかんだしっかり主任を務めているのは見なくてもわかる。
自分ではあっという間に感じていた七年という月日の間に、なんだか先生が手の届かないところに行ってしまったような、そんな不思議な感覚がした。
喋り方も、私を呼ぶ"みゃーこ"という声も、同じなのに。
……私が、あの頃のまま取り残されてしまっているだけなのだろうか。
子どものままで、大人になりきれていないのだろうか。