とろけるような、キスをして。
「ごめんね先生。いろいろ思い出しちゃった」
「いーよ。元々そんな気がしてついて行ったんだし」
「そうなの?」
「うん。みゃーこは昔から一人で抱え込むから。高校の時もよく俺が話聞いてやってたろ?実家に行ったら絶対にセンチメンタルになると思って」
「……よくおわかりで」
確かに高校の頃から、よく先生には相談してたっけ。担任でもなかったのに、先生とだけは仲良くなった。
……そう言えば、私なんで深山先生とこんなに仲良くなったんだっけ?
少し考えてみたものの、楽しく喋っていた記憶しか出てこない。
……ダメだ、思い出せない。まぁいいか。
先生の車に乗り込み、次は高校に向かった。
五分ほどで、懐かしい校舎が見えてきた。
私立白河高等学校。
この街は公立高校が多く、私立高校はなかなか無い。
そんな中で昔からあるこの白河高校は、私の母校であり、深山先生が新卒から現在までずっと働いている学校だ。
噂によると先生もここの卒業生だと聞いたことがある。
母校で働くって、どんな感じなのかな。
夢も希望も無く東京でただただルーティンワークを繰り返しているだけの私には、未知の世界だ。
職員用の駐車場に車を停めた先生の後ろを歩いて久しぶりの校舎に入る。
来客用のスリッパを履いて、記憶よりもいくらか古く見える校舎の中を進んだ。
各教科の授業で使った特別教室や体育館がある旧校舎をちらりと覗いたり、本校舎にあるフリースペースや職員室も覗いたりした。