とろけるような、キスをして。

二日目




「みゃーこ!おはよ」


「おはよう。って言ってももう昼に近いけど」


「ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃって」



 翌日、ホテルの朝食を食べてからチェックアウトして、先生と待ち合わせをした。


どうやら寝坊してしまったらしく、予定よりも一時間遅い集合だった。


 荷物が入った大きめの鞄を先生の車のトランクに詰めて、昨日と同じ助手席に乗る。



「じゃあ大きい本屋にでも行くか」


「うん」



 目的の履歴書を探しに、街で一番大きな本屋さんに向かう。



「あ、みゃーこ。本屋で俺のこと"先生"って呼ぶの禁止ね」



 運転中に口を開いた先生に、私は首を傾げる。



「なんで?」


「若い女連れた男が、"先生"って呼ばれてたらなんか怪しいじゃん。今流行りのパパ活?みたいなの疑われそうじゃん」


「……確かに」



 言われてみれば、確かにそうかもしれない。


私から見れば先生はずっと先生だけど、周りから見れば私ももう大人なわけで。



「しかもそのタイミングで万が一受け持ちの生徒と遭遇してみろよ。俺はもう明日から仕事に行けやしない。高校生のネットワークは怖いからな」



 今はどんな些細な噂でも、SNSを介してあっという間に広がる時代だ。


怖い怖い、と身震いする先生の気持ちもわかるような気がする。



「じゃあなんて呼べばいいの?」



 聞いた時、ちょうど信号が赤になって、車はゆっくりと止まる。


 少し考える素振りをした先生は、こちらを振り向く。


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