とろけるような、キスをして。



「……修斗、とか」



 少し照れたような笑顔に、見ている私の方が照れてしまってじわじわと顔が熱くなるのを感じる。


なんだよその笑い方。私より子どもっぽいじゃん。


 そう思うのに、何故だかドキドキしてしまうのは何故だろう。


見ていられなくて、慌てて下を向く。



「それはちょっと……その、えっと」


「なに」


「……なんか、いきなり名前呼びとか緊張する……から。却下で」



 先生は私のことをあだ名で呼ぶくせに。なんで私だけ名前呼びなのか。恥ずかしいじゃんか。



「えぇー?いいじゃん。俺は呼んでほしいけどなー」



 ハンドルに軽く体重を乗せるようにしながらニヤッと笑う。


さっきまでの照れたような顔は何だったのか、あっという間にいつも通りの余裕な先生に戻ってしまったようだ。


 早く呼んでよ。そんな視線をひしひしと感じるものの、すぐに信号が青に変わったのを見て



「ほら、青だよ!進んで!」



と話を逸らす。


 しかし先生は諦めていないのか、



「ほら、呼んでみなよ」



と前を向いたまま嬉しそうに急かしてくる。


 私はちらりと先生の顔を見ながらも、恥ずかしくて口籠る。


でも、確かに呼び方は変えないといけない。
だからっていきなり……。


 ……もう、やけくそだ。



「……修斗さん」



 さすがにいきなり呼び捨てはできなくて、せめてもの抵抗で"さん"を付ける。


 タメ口なのに"さん付け"なんて、若干変な感じもするけれど。だからと言って"くん付け"も、なんだか違う気がした。


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