とろけるような、キスをして。
スマートフォンで時間を確認しながら挙式が始まるのを一人でそわそわと待っていると、
「……みゃーこ?」
と聞き覚えのある声が聞こえて、振り向いた。
「……あ。深山先生」
「やっぱりみゃーこだ!久しぶり!」
「お久しぶりです……」
スーツに身を包んだ背の高い男の人。
名前は深山 修斗。私が高校時代、担任ではなかったけれど三年間お世話になった教師だ。歳は確か晴美姉ちゃんと同じだから、三十二歳だろう。
昔から何故か私のことを"みゃーこ"と呼ぶ、変な先生だ。
私が高校生だった頃と同じ黒い髪の毛。あの頃はいつもぺたんこだったのに、今日は前髪をあげていてその表情がよく見える。どうやら分け目も変えたらしい。
二重の目は笑うと細くなり、睫毛は女の子のように細くて長い。高い鼻に薄い唇。程良く引き締まった身体に、恨めしいくらいに長い手足。
昔から"イケメンでフレンドリーで優しい"と、女子生徒からモテモテだった。
そんな高校の教師が何故晴美姉ちゃんの結婚式に来るのかと聞かれれば。
「四ノ宮先生からみゃーこも来るって聞いてたから、楽しみにしてたんだ」
晴美姉ちゃんも同じ高校で教師をしている、深山先生の同期だからだ。
その関係もあって、高校時代からずっと友達感覚で接している。久しぶりに会ったものの、あの頃から変わらず基本タメ口だ。