とろけるような、キスをして。



 何か、両親に語りかけるべきだろうか。


ここにはいないとわかりきっているのに、ここで語りかける意味はあるのだろうか。


 ドラマや映画で、こんなシーンを見た時には必ず思っていたこと。


でも、実際に自分がそちら側になると、思わず語りかけたくなる。



"なんだか、ここにいてくれているような気がするの"



 いつだか見たドラマのセリフが、頭の中に蘇る。


 ……確かに、そうかも。


お父さん、お母さん。……ここに、いるのかな?


いるのならば、聞いて欲しいことがあるの。


謝らなくちゃいけないこと、お礼を言わなくちゃいけないこと。


たくさん、話したいことがある。聞いてくれるかな。


 吹いた風が、私の頰を撫でるように通り過ぎていく。


それに妙に安心して、一つ笑みをこぼす。


そのまましばらく、目を閉じて手を合わせていた。


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