とろけるような、キスをして。



「みゃーこはこの後は?いつ東京戻るの?」



 席に戻ってから晴美姉ちゃんを眩しく見つめていると、先生が話しかけてくる。



「私?……この後はちょっと実家の方見に行って、今日はホテル泊まる予定。明日の最終便で向こう戻るよ」



 今日は土曜日だ。仕事の関係もあり、明日の最終便の飛行機のチケットを取っていた。



「一人で実家行くの?」


「うん。別に帰省したからって会うような友達もいないし、ホテルのチェックインまで時間あるし。どうせなら久しぶりに街中とかそれこそ高校とか、いろいろ見に行きたいなって思ってたから、その辺ぶらぶらしてる予定だよ」



 上京してから、初めての帰省だった。


いろいろ見たいところがあるけど、誘うような友達なんていない。


 晴美姉ちゃんを見つめながら答えると、



「じゃあそれ、俺も付き合っていい?」



 と言われて、思わず振り向いた。



「え?先生が?なんで?」


「なんでって言われても。せっかく久しぶりに会ったし、みゃーこともっと話したいなと思って。それに高校も行くなら、関係者の許可が無いと今入れないから」


「あ、そうなの?」



 その辺は全く考えていなかった。確かに部外者が勝手に入るわけにはいかないか。



「うん。だから俺がいた方が何かと便利だと思うよ」


「先生も暇なの?」


「うん。この後何も予定無い」


「……じゃあ、お願いしようかな」


「よし、決まり!」



 嬉しそうな先生は、最近の学校生活をいろいろと話してくれた。あの先生が転勤したとか、この先生が寿退社したとか。


 私が在籍していた頃の教頭先生が今校長先生をやっているとか。


 同じテーブルにいる人たちが正に学校関係者だ。


 言われてみれば懐かしく見えてくる顔ぶれに、いつのまにか先生の話を楽しく聞いていた。



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