茨ちゃんは勘違い
プールサイドで談笑する女子三人とUMA的な生物一匹は、夜な夜な奇行に走る男子生徒二人に、全く気付いていない。

だが、その不審者側の一名、安部隆和はもう一人ののぞき屋に気付いた。

安部は穴の空いたフェンスから顔だけ出ているのを見て、まずこう思った。

(──心霊現象??)

薄暗い視野、それも生粋の眼鏡君である安部には、木更津が人外に見えてしまっていた。

何故、茨を人外だと認識しないのかが不思議だが。

そして目に映った「恐怖!春の陽気に誘われて、プール際に浮かぶ生首の怪!」を極めて冷静に見つめながら、自身に襲いかかる強烈な尿意を必死に堪えた。

むろん、恐怖によるものである。

(漏らしたら負け……ここで漏らしたら、僕は霊に負けた事になる!)

何の勝負だかは知らないが、自分の霊能力的な何かを疑うよりまず先、如何に化粧室に行くまで今にもほとばしりそうな小水を下腹部の筋肉のみで抑えるかが、安部の課題になっていた。

そんな一人格闘をする安部の事等露知らず、木更津は女子達の監視を続けていた。
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